♪愛の喜び(マルティーニ)
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はじめに
書体の移り変わり
古典の歴史
書体と線質
点画の基本
統一と変化
文字の配置
路傍の書
平家琵琶塚
路傍の書
大和は国のまほろば
川端康成書
路傍の書
明日香村
於美阿志神社
今回のテーマは「文字の配置」すなわち、文字の並べ方です。文字の並べ方は、筆使い、字形のまとめ方とともに、書の技法の三大ポイントの一つになっています。
均斉形式と平衡形式
均斉形式
平衡形式
文字の並べ方は、原稿用紙に一字ずつきちんと書いていくような並べ方と、大小不揃いながら、力や勢い、重さなどの関係でつり合いをとる並べ方に分けることができます。
前者を均斉形式といい後者を平衡形式といいます。
楷書の場合は、字粒をそろえて書くのが基本ですから、均斉形式が多く、行草書の場合は大小の変化が多いので、平衡形式が多いようです。
もちろん、楷書でも大小混じえて書いたものもありますし、行草書でも、一字ずつきちんと並べて書いたものもあります。また、どちらが良いというわけでもありません。
余白の緊張感と字座(じざ)
文字の並べ方がうまくいっているかどうかは、まっすぐに並んでいるかどうかといったことの他に、余白に適度な緊張感があるかどうかです。余白の緊張感は、字座と実際の余白がうまく合ったときに生まれます。
字座というのは、文字や点画の筆勢の及ぶ範囲、あるいは文字群がその周囲に必要とする広さのことです。
私たちは座ったり寝たりすることができる広さがあれば生活できますが、それだけでは窮屈です。ある程度のゆとりの生活空間が必要です。字座はこれに似ています。
力のあふれた書は、周囲を広く支配しますので、全体がそれにつれて明るくなります。貧弱な書は、周囲を広くあけると無駄な空間になり、それを埋めるために文字を大きく書くと、全体が暗くなるという悪循環に陥ります。
作品の鑑賞
均斉形式
漢碑 呉譲之
文字の形がよく整い、
背勢(
中心部を引き締め手足を伸ばしたの形)なので、字と字の間をあまり詰めずに広い字座が必要です。
平衡形式
喪乱帖 王義之
文字の結体が
向勢
(字形を中膨らみにまとめる事)のため、文字自体の中にゆとりを持っている。
周りに広いところを必要にしないので、つめて書いたほうが似合います。
渡辺沙鴎書
(1863〜1916)
明治三書家の一人
楷書の作品ですが、文字の大小や潤渇が入り混じった平衡形式で、紙を折らずに、臨機応変に書いています。
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この『書 尚風のPage』を公開して一年余りになりました。
更新を重ねながら、私の作品や「書のはなし」で書の歴史を鑑賞したり技法を考えたりしてきましたが、これらはごく一部分で全ては語りきれないものです。
このWevページを手がかりとして、書道への親しみを少しでも広げていただければ幸いです。
書というものは、ただ筆をとって書く技術だけではなく、時代の思潮と密接にかかわりながら、絵画や彫刻の造形とも呼応しつつ、ときには仏教や文学とも向いあい、さまざまな歩みをしてきました。そんな歴史を幅広く知りながら、自分といちばん波長のあう書風を見つけ、書に親しみ持つことが出来ればと願っています。
平成19年3月 尚風